育児ワンポイントメモ

     赤ちゃん、大きくなっていますか?
 お子さんが生まれた時の体重は、ほとんどの親御さんはご存じですね。満期産であれば約3キログラム(身長は約50センチメートル)ですが予定日より早く生まれた場合には、それだけ体重は小さくなりますし逆に大きめのお子さんもおられます。妊娠月齢に応じて、お腹の中の赤ちゃんも大きくなりますが、つわりが強かったりすると小さ目に生まれることもあります。(妊娠中のたばこや飲酒は要注意です)

 医学の進歩により、少々小さく生まれても何の障害もなく元気に育てられるようになりましたし、1000グラム以下で生まれたり双子や三つ子のお子さんでも元気に成長されています。赤ちゃんがお腹の中にいるときには、お母さんの体温で温かく暖められており、自分で呼吸をしなくてもお母さんの血液に溶けている酸素を分けてもらっていましたし、栄養についても自分でミルクを飲まなくてもお母さんの血液に溶けている栄養分をいただいていました。ところが、生まれるや否や、すぐさま自分で呼吸をしないと死んでしまいますし、外界の気温(10~30度?)に対して、頑張ってエネルギーを作り出して37度くらいの体温を維持しないと低体温になって体が弱ってしまいます。

 このエネルギーの元は、肝臓とか皮下脂肪や筋肉にある程度は蓄えられていますが、生まれたその日から十分のミルクを飲むことは出来ませんから、数日間は一時的に体重は減ってしまいますが普通には1週間以内に回復してきます。また、お腹の中では、お母さんから貰っていた酸素を効率よく利用できるように赤血球が多すぎる状態でしたが、生まれて
自分で呼吸するようになると必要でない赤血球が壊されて肝臓で処理されるために、生理的黄疸(正常でも肌が黄色くなる)が見られることがあります。この黄疸が強すぎると、ミルクの飲みが悪くなったり、元気がなくなり体重の増え方が悪くなります。

 赤ちゃんの体の具合を知る一番の方法は、お乳をしっかり飲んでいるかどうか、体重がうまく増えているかどうか、ということですから、普段から哺乳量や体重には注意を払っていただきたいと思います。母子手帳には、赤ちゃんの身体発育のグラフが画かれていますので、参考にして下さい。1日あたりの体重の増え具合は30~35グラムで、最初の1カ月で約1キログラム増えることになり、生後3カ月で体重は2倍(3kgから6kg)、1歳では体重が3倍 (9kg)身長は1.5倍(50cmから75cm)になります。

 体重が増えすぎの場合、肥満を気にする方もおられますが、活発に運動を始めると身体もスマートになりますからプロポーションが保たれていれば心配ありません。ただし身長に比べて、極端に体重が増えていく場合には病気が原因になっていることもありますから、専門的な検討が必要になります。

 逆に体重の増えが悪い場合は厳重な注意が必要です。貧血や先天性心疾患、消化器疾患やホルモンの異常などが原因で、ミルクの飲みが悪かったり吐きやすかったりすることもありますから、早めに小児科に相談に行くようにしましょう。体重の増え方が悪いと言うことは後に述べる脳の発達に必要な栄養も不足すると言うことですから、特に注意が必要です。体重の増え方が悪い場合には、眠りが浅くなったり、甲高い声で泣いたり、身体を突っ張りやすくなったり、便秘がちになることもあります。

     神経発達について
  以上のような身体の発育に加えて、赤ちゃんは神経の発達という面で、劇的な変化を遂げていきます。生まれたときの赤ちゃんの脳の重さは約350グラム、1歳では750グラム、大人では1400~1500グラムですから、1歳までに約2倍、それから大人になるまでに更に2倍になります。
 母子手帳をご覧になると、生まれたときの頭囲が書かれてありますね。32~33cmの場合が多いですが、1歳では46cm、2歳では48cmと1歳までに急速に成長していることがわかります。

 頭囲が標準範囲より小さすぎる場合は、脳や頭の骨の発育に問題(小頭症や狭頭症)があることもあり、逆に大きすぎる場合は、頻度は少ないですが水頭症などの心配もあります。体質的なものや遺伝的な要素が強い場合もありますから、標準の範囲からだんだん外れてくるようであれば、専門的な検討が必要です。

 この、目まぐるしいばかりの脳の成長に対応して赤ちゃんは目覚ましい発達をしていきます。母子手帳の中に赤ちゃんの月齢に応じて簡単なアンケートが入れてありますから、時々参考にしていただきたいと思います。
  3~4カ月では「首がすわっているか」「動くものを目で追うか」「あやすと声をあげて笑うか」など、6~7カ月では「寝返りが出来るか」「おもちゃの持ち替えが出来るか」、9~10カ月では「ハイハイが出来るか」「おしゃべりをしようとするか」など、実にたくさんの発達の目安がありますが、それぞれの解釈は難しいので、出来ていない項目がたくさんあるようであれば小児科に相談するようにしましょう。

 赤ちゃんは会話もできませんから「体がだるい」「気分がすぐれない」「イライラする」などと訴えることはできません。眠りが浅くて抱いていないとぐずってしまう、身体を突っ張って分けもなく興奮してしまう、落ち着きがない、身体がグニャグニャして柔らかすぎる、など些細なことでも健康診断で相談してみてください。


      子育てのポイント
最後に、子育てのポイントをお話ししましょう。かつて、子育ては「親が子を育てる」ものだと考えられていました。ところが、最近の研究で「子供も親を育てる」ことが分かってきたのです。

 お子さんの顔を、じっとご覧になって下さい。お子さんの目を見ていると、たとえ生後1カ月のお子さんでもこちらを静かに見返しているのが分かると思います。できるだけ顔を見て話しかけてあげるようにしましょう。
「お母さん頑張ってネ」「私がついているから、一緒にやっていこうね」
というお子さんの心の声が聞こえたら、もう、それで育児は80%成功しているのです。